スマートフォン。50歳になる私の生活には、いつの間にかこの小さな機器が深く入り込んでいる。買い物時の個人認証、少額決済、銀行振込、カードの使用履歴の確認……。今やスマホは、生活資金の管理を含めた「生存に不可欠なポジション」を占めている。
正直なところ、「軒先を貸して母屋を取られる」とまでは言いませんが、生活を乗っ取られたような感覚すら抱いている。
私の1日を例として……
朝起きてスマホで改札を抜け、コンビニの朝食を決済する。勤務中も仕事やプライベートの連絡をスマホでこなし、退勤後の一杯もスマホで支払う。そして帰宅後、寝落ちするまで動画を見て、また明日。
で……もし、明日の朝スマホが故障してしまったら?
間違いなく通常の平日は送れない。改札を抜けられず、慣れない現金払いでモタモタと時間を浪費するでしょう。便利な世界に慣れきってしまったこと自体が、自分の「弱点」になっている気さえする。
選択肢が増える
そんな2択の世界に、かつてデジタルの巨人・Microsoftが参入した。いや、した事があった。彼らが打ち出したOSが「Windows Phone」だ。
しかし、2026年現在のスマホ市場は、iPhoneかAndroidのほぼ2択。家電量販店に行ってもWindows Phoneの姿はなく、存在すら知らない人も多い。
Microsoftが2010年に発表したWindows Phoneは、クラウド同期を前提とした一般消費者向けの設計だった。それ以前から、PDA(電子手帳)向けに開発されていた「Windows Mobile」というOSがあったが、それをスマートフォン用に移行させたのがWindows Phoneというわけだ。
一例としての ウィルコム「HYBRID W-ZERO3」
例えば、2010年発売のウィルコム「HYBRID W-ZERO3」。

この端末のラベルには「Windows Phone」のロゴが印字されている。しかし実際に搭載されていたのは、一世代前の「Windows Mobile 6.5」。OSの移行期という大人の事情で、中身がMobileなのにPhoneのロゴを冠するという、いびつな過渡期を象徴する端末となってしまった。
Microsoftのスマホ戦略は、端から見れば迷走しているようにも見えたが、2013年には世界24ヶ国でiPhoneのシェアを上回るなど健闘した時期もあった。しかし、2017年にはシェアが0.1%まで急落。2019年には惜しまれつつサポートが終了し、「Windows Phone」の歴史も途絶えてしまった。
もしも、現在の2強の中にもう一つの選択肢として生き残っていたら、もっと「選ぶ楽しさ」があったはず……。松屋のメニューを選ぶときのようなワクワク感が。
アプリケーションの不足や開発の遅れなど、追い風が吹かないままひっそりと姿を消したWindows Phone。しかし、デジタル環境が激変する昨今、またひょんなことから復活するかもしれない。その時は、この記事をほんの少しだけでも思い出してもらえれば幸いです。